代表理事挨拶

Japan Transcatheter Valve Therapies
JTVT代表理事・理事長
白井 伸一(小倉記念病院 循環器内科)

2014年には経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会(現・THT協議会)の後援の下で日本経カテーテル心臓弁治療学会(JTVT:Japan Transcatheter Valve Therapies)が発足以来、澤 芳樹先生並びに志水 秀行先生という偉大な先輩に引き続きましてこの度代表理事・理事長を拝命いたしました。

2013年当初は年間100例程度だったTAVRも2021には10,000例を越え、2024年時点では16,000件以上が全国で施行されています。またそれまでの30日死亡は1.1%前後を推移していたものの2024年には0.8%と遂に1.0%を下回る成績となりました。これはデバイス、アプローチの進化だけでなく綿密な治療計画、そして技術の向上によるものと思われ、結果として本邦におけるこの治療全体のレベルの向上をもたらしているものと考えております。改めて御礼を申し上げるとともにこれからもこの治療の発展を会員全員でさらに良いものにして行ければと考えております。

現在JTVTの会員数は1,407名とこちらも右肩上がりに入会いただいております。TAVRの治療の成熟に伴い治療に参加あるいは興味を抱いていただいている方々の入会をいただいていることを鑑みてJTVTも会員の皆様のさらなるニーズに応えられるような魅力ある学会づくりを目指してゆきたいと思っております。

JTVTは現在、島村 和男先生とともに代表理事を務めさせていただいておりますが、内科系8名、外科系7名の理事とともにこの学会を運営させていただいております。ハートチームという言葉通り外科と内科で協力しながら風通しの良い組織運営を行うことを意図してものであります。そのため本学会では、医師、看護師、臨床工学技士、理学療法士など、職種の垣根なく、様々な専門職が集い、最新の知見を共有し、議論を深める場を提供していく場所になれればと考えております。

本学会の活動としては年に一度の学術集会の開催、学術誌発行、ワークショップの開催支援、現在米国を中心としたTranscatheter Valve Therapy(TVT)とのタイアップ推進など、学術団体としての活動を推進することに加えて、TAVR専門施設・指導施設、実施医・指導医の認定、TAVRレジストリーおよびレジストリーを活用したリサーチの支援、TAVRライブ実施のガイドライン作成ならびにライブ手術への医療安全委員会メンバーの派遣など、THT協議会から委託された実務を行っています。

以前と比較をすればデバイスラグはかなり解消されてきているものと思われる一方、海外と比較をするとデバイスのオフラベル使用が難しい現状であることも事実です。おそらくアジアでも他国に先んじられている現状と言って良いと思います。現実としてすぐに認可を得ることは決して容易なことではないとは思いますが、THT関連学会協議会を含めた関連学会である日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本小児循環器学会、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、National Clinical Database(NCD)に対してその現状を知っていただくこと、また認可を得るための方策も考える時期に来ているのではないかと思っております。当学会のみで解決できない問題ではありますが、施設全体の治療成績が向上しているこの状況では考えても良いものであると考えております。

本学会は経カテーテル心臓弁治療に特化した学会でありその使命は治療成績の向上を通して医療福祉に大きく貢献することであります。この分野におけるさらなる発展と安全な治療の普及のための有益な情報発信と学術議論の場としてより一層努力を行ってゆきたいと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。